140 マーケットオフィスとの闘い 1
突然マーケットオフィスから二ページの手紙が届いた。持ってきたのはブライアンというがっしりとした体格のセキュリティマンで、警察官を思わせる制服に身を包み、マーケットでは「私は治安の長だ」とのでかい態度をしている。ブライアンは手渡す時、私が先週土曜日に一日中、駐車違反をしたと言いながら、威圧的な目で睨んだ。おかしいなと思いながら手紙に書いてある私の車のレジナンバー(登録番号)を確かめてみると私の車ではなかった。早速その手紙を持って事務所へのり込んだ。マネージャーのジョンが出てきたが詫びの言葉すらなかった。
私たちストールホルダーはマーケット近くのパーキング場に駐車してはならないことになっている。お客さんの車を第一に考えているからで、日本ではそれはごく自然のことである。それでかなり離れた距離、歩いて五分程の草むらの中がストールホルダー専用の駐車場となっていて、いつもここまで車を持っていく。このようにお客さん優先の思考法はこのオーストラリアでは非常に珍しい。通常大病院とか医院、ゴルフ場とかの公共施設では医者とか幹部連中には職場から一番近い場所を与えられ、独占しているのが普通で、その場所には絶対駐車しないようにとのサインが貼られている。そしてその隣が身障者専用となっている。
このカラーラマーケットでは「何時行っても駐車場所がない」と、お客さんからいく度となく苦情があった。それでこのようになって、これが本来の客に対するサービス精神で、あたりまえのことである。そこでオフィスとしてストールホルダーに対し荷物の積み下ろし以外と3時まで駐車は厳禁、もし見つかれば200ドルの罰金を取ることにしたのである。そして車のナンバーをチェックする係りをわざわざ雇って徹底的にストールホルダーの番号調べをしたのだった。私たちに車のレジナンバーを確かめに来るのではなく、どのようにして調べたのか全く分からない。そんな簡単な調査では間違って当然といえる。
その二週間後にセキュリティのブライアンが又もマネージャーからの手紙を持ってやって来た。今回は私の車登録番号と一致していた。再び事務所へ苦情を言いに行くとマネージャーのジョンが奥から出てきた。そして先週の土曜日、私が車を一時頃に駐車していたというのであった。「それは3時過ぎの間違いで、その後、修理の品物を車に積み込み帰宅した。その時、3時40分頃であった」と言ったら、ジョンは手をブルブル震わせて怒り出した。彼がなぜそんなに怒り出すのか訳が分からない。「それは何かの間違いである。それを見たのは一体誰なのか?」と尋ねたがはっきり答えない。「とにかくそれを見た人物に会わせて欲しい」と言ってオフィスを後にした。「どうも先々週からおかしな事ばかりが起きる」と思いながらも、その原因は分からなかった。因みにお客の少ない時にはマーケット終了時間の午後4時以前に閉店する店舗は非常に多く、それが原因の苦情ではない。
次の日曜日、マネージャーのジョンとセキュリティのブライアンが私の店へやって来て、再び先週の一件を持ち出した。私はすっかり忘れていたのである。そしてブライアンが「わしが一時頃、あなたの車を見た」と言い出したのである。「それならどうして、その日のその時刻、私に注意を促しに来なかったのか?あなたはそれが仕事ではないのか」と言ったら、彼は何も答えなかった。
ジョンは興奮して手を振るい始めた。彼はパーキンソン病だと聞いたことがあったが、かなりひどい状態である。まだ私よりずっと若いのに残念なことだ。
「私には証人がある」と言って、二人を私が懇意にしている香料、キャンドル屋へと連れて行った。過去ブログでも紹介した姉妹、斜め向かいで店をやっているが、二人はタバコが好きで一時間ごとに外へ喫煙に行くが、たまたまその日、私が3時過ぎに駐車している現場を見ていたのであった。ところが彼女たち、ジョンとブライアンを連れて行くと、「私たちは知らない」と言い出したのである。蛇に睨まれた小動物とはこのことで、ここで私に味方をすると、後でジョンからどんな仕打ちをされるか分からないとの恐怖心が彼女たちの脳裏をよぎったのである。それでもうこれ以上彼女たちを巻き込むのを止めることにした。しかしこの一件については、私は決して譲らかった。ブライアンもマーケットの長であるジョンから頼み込まれ、仕方なく嘘をついたのである。
ちょうど一ヶ月前にこんな出来事があった。土曜の朝、何時ものようにガラージセール巡りを終え、マーケットに着いたのは午前8時前、駐車場のドライブウエイを進んでいると突然大型バンのタクシーが私の車の前方で右折、そしてそのドライバーは突然バンを停め、バス乗車係りと喋り出したのである。前方にはココスの木があって、私の車は完全に前後左右動けなくなってしまったのである。しばらく待ったが、おしゃべりは延々と続いたので、クラクションを鳴らして促したら、やっとバンを左に寄せた。この国では男女共おしゃべりを楽しむ人が多い。職人さんでも仕事をほったらかしておしゃべりをする。それが延々と続き、このタクシードライバーのようにトランス脂肪酸でいっぱい膨らんだお腹を抱え、息をするにもしんどそうな太った男に限って、人の事を全く気にしないのである。
以前、近くのショッピングセンターKマートで買い物をした時のことである。レジを待っていると私の番になってから突然責任者らしき中年女性がレジの女の子と話し出した。それが長すぎるので中年女性に言ってやった。「話は私を済ましてからにして欲しい。待っているのは私一人だ」と言ったら、彼女は私を睨み付けた。駄目でも、時には嫌われようが言わねばならないこともある。将来彼女はこの出来事を思い出すことだろう。私はそれで十分である。



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