181 撤退か?日本人ディベロッパー
今から20年近く前、サーファーズパラダイスの西域にカラーラゴルフクラブという小さくて平坦なゴルフ場があった。低い土地なので大雨が降ると、あちこちが水没、大きな池も出来てコースは閉鎖された。数種類の野鳥が飛来し、餌探しで鳥たちの楽園となっていた。そして水が完全に引くまで数週間そのような状態が続いた。
市当局ではこの土地はウォーターリザーブ(ダムのような)とし、大雨時の水の溜まり場と認定していた。だが大雨もそんなに多くないことから、芝を植え、普段はゴルフ場として使っていたのである。広い打ちっぱなしのドライバーレンジがあってバケツ一杯のボール代、それに1ラウンドのグリーン費も安く、予約もいらないことから何時も賑わっていた。私もレストランをやっていた頃、度々練習に通い、その後コースを回った。
日本ではバブルの最盛期、そのゴルフ場をニフコと言う日本の会社が買収した。低い土地は盛り土をし、ところどころ池を作り、土管を埋設、水はけを良くして、少々雨が降っても水没しないようにコースを改造、名称もエメラルドレイクゴルフコースと改名した。
当時、この会社は日本では中堅のプラスチックメーカーだったと聞いていた。このゴールドコーストで始めて宅地造成や不動産の事業を始めたらしい。名前をニフサンと変え、ゴルフ場近辺の土地を次々と買収し、そこを宅地に造成、家を建てて販売をした。
そのゴルフ場の道路を挟んだ東側に遊覧飛行場(タイガーモス機)の施設がある大きな土地が広がっていた。広さは当ゴルフ場の二倍はあるだろう。昔からその場所に大ショッピングセンターが出来るとかの噂もあって、再開発地として有望視されていた場所である。この土地のすべてをニフサンがいつの間にか手に入れ、大開発が始まっていた。
ゴルフ場と同じく、ここも低い土地なので大雨の時には浸水していた、その半ばに大きな湖を造って、その掘った土砂を積み上げ、宅地として造成、いわゆるウオーターフロントの土地を開発したのである。これなら盛り土をして通常の宅地をたくさん造成するより、売れる土地の数は少なくなるが、水際の土地は高く売れることから、確実に儲かると睨んだのである。
何台もの大型重機の投入でたちまち大きな湖とブロック状の宅地が造成された。川から水(この川は海水)を引き、満々と湛えたブルーの湖面、昔なじみの付近の景色、元ローカル飛行場の面影は全くなくなってしまった。湖も以前からその場所にあったように錯覚してしまうほど、見事な出来栄えとなったのである。
20年前のバブル期には、日本からは大手保険会社を始め、一流企業がやってきて、だぶついた日本金を持込み、この街で不動産を買いまくった。地上げ屋までやって来て活躍したのである。ライオンズマンションで有名な大京不動産もホテルを建てたり、ゴルフ場を造ったりと、この街にかなり投資をしてきたが、どの企業も儲けるつもりが、日本でバブルが弾けたことから、安く叩き売り損をして、日本へ撤退せざるを得なくなった。時の状況にもよるが、この街では大小にかかわらず、ビジネスをして儲けることは非常に難しい。
このニフサンは日本企業として数少ない成功したディベロッパーだったが、21日付けゴールドコーストブルティン紙によると、今後の開発をすべて断念したと伝えている。それに伴い、今まで売りに出していた物件の安売りを始めた。どうもこの地に於けるディベロッパー業からの撤退を余儀なくされた模様で、「ニフサンお前もか?」と言いたいところである。
この会社の物件は高すぎると思っていた。以前、この社の物件を友人が見に行くと言うので同伴したことがあったが、買いたいとは思わなかった。大きくディスカウントしてもまだ高いのである。手の込んだ造り、良い材料を使っていたとしても、高すぎれば買う人はいない。このゴールドコーストは年金生活者が多く、裕福な人は少ないのである。それにお金持ちなら、建売住宅は絶対買わない、すべて注文建築をするからである。
この国ではビラ(村)という形式の集合住宅風建築様式が増え、ニフサンはその豪華版を開発している。その区域全体を高いフェンスで囲い外界からは完全に遮断、車が出入り出来る大きなゲイトを設置、そこを通るには中の住人からスイッチで開けて貰う方式である。これは外からの不審者侵入を防ぐためだが、窃盗が多いこの国では、住人の中にドロボーがいたとしても不思議ではない。そのような盗難が度々起きている。それにボディコーポ(ガーデン等を管理する会社)の費用が高すぎる。それは販売会社が兼任する場合が多く、この費用は会社の言いなりで毎年上がっていく。それが嫌なら家を売って出て行けと言うことだが、家を売るとコミッションを取るのである。
私はパソコンやテレビのサービスで個人の家庭を訪問する機会が度々あったが、高級マンション等のセキュリティの厳しい住宅に行くのが非常に嫌だった。手間が掛かりすぎるのである。住人としてはその厳しいセキュリティシステムに満足して、他人との差別化に優越感とか誇りを持っているようだが、このような客からは倍額のサービス料を取っても良いとさえ思っている。実際は貰わなかったが。
俗に言われている100年に一度の世界的不況で一次産業が主のオーストラリアでも原料の輸出が減って、BHP等の大手資源企業の人員削減が相次いでいる。最大の輸出国だった中国も鉄鉱石をあまり買わなくなってしまった。政府はこの不況を乗り切るため銀行利子を下げており、近々また下げるそうで、昨年の今頃は8パーセント以上あったのに近い将来、その半分以下になりそうだ。ニフサンもこの国の将来の経済見通しに期待が持てなくなったようである。
日本では国会を通すのにやっきとなっている定額給付金だが、この国ではすでに支給された。受給者の対象は貧困生活者、国からの年金生活者、シングルマザー、シングルファーザーで子供の数に応じて追加される。一人頭千ドルで子供二人のシングルマザーだと3000ドルの支給金が受け取れる。日本の一人に付き12000円とは雲泥の差がある。
残念ながら、私はどちらにも該当しなかったので貰えなかったが、すでに支給から数ヶ月経っている。連邦政府は経済活性化を目的として支給したのだが、その経済効果は見られない。マーケットはその成果が如実に現れ、その動向を知る最も良い場所だと思うのだが、以前よりも悪くなっているのが現状である。
クレジットカードの支払いに当て、消えてしまったのか? 或いは他に理由があるのかも知れない。なんせそのお金をカジノで全て使い果たしてしまった人もいたと言う話も聞いている。ちなみにカジノで浪費することが経済活性化に繋がるのかどうかは分からない。
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