134 有名デパートで働く 3
私がオーストラリアへ永住したのは1981年11月、早いもので丸26年を迎える。過去ブログで詳しく述べたが、サーファーズパラダイスの海岸近く目抜き通りでドーナツショップの権利を買い、それを日本食テイカウェイ店に改装し営業を始めた。そして本格的な日本レストランを持つまでになったが、1995年11月、新ビル建築の為立ち退きを機に、他の事業へ転換することにした。その準備の為、研修校TAFEカレッジに入学して、電気、電子、IT科、三種類のサティフィケイトを取得、そして目的の店をカラーラマーケット内にオープンさせることが出来た。以来、細々だが営業を続けて丸7年になる。
この国の学校の先生やら生徒、それに授業内容にも興味があったので、前述の如く研修校へ入学、延べ二年あまり学んだ。そして知りたいことは、一通り得たのだが、まだこの国で就職したことがない、人に雇われ給料を貰った経験がないのである。それと職場での雰囲気及び従業員の様子も知りたかった。そこで65歳のリタイヤ前に、その体験も是非しておこうと思った。
就職斡旋窓口に頼んでいたら、同デパートで清掃スタッフの募集をしているとの連絡が入った。単純作業だが完全に個別の仕事で、他のスタッフに気遣う必要がない。土、日の朝はデイオフ、平日も朝早いのが気に入り、時間も短いし、本業である修理業とマーケットの営業には全く差しさわりがない。しかも良い運動となるから、持病である糖尿病のためになると思って就職を決意した。ちょうど還暦を迎える一ヶ月前だった。
デパートでの仕事は、掃除とはいえ本当に楽しい。一般店員が出勤して来るまでの時間、ガランとした、静まり返った売り場で、私は思い通りの采配で清掃作業が出来る。そうしているとデパートが自分の店のように思えてくるのである。急いで時間内にやり終え、次へと移動していく、広い場所ゆえに効率を求められるが、忙しいので3時間があっと言う間に過ぎてしまう。9時少し前に仕事を終え、道具類すべてをまとめてトローリーに乗せ部屋に戻る。使った道具の手入れをした後、シフト表に時間を記入して帰路に着く。
開店と同時にお客さんが入ってくる。制服姿の店員すべてが直立不動の姿勢で並び、彼らを出迎えている。その中、私たちスタッフは売り場を通りエスカレーターで上階の保安室へと向かうのだが、一生懸命掃除をした後のきれいになった売り場を見渡しながら、その達成感に満足する。店員たちは、今朝も新鮮、爽快な気分でお客さんに接しられるだろうと思いながら、その場を後にする。
自宅の場合でもそうだが、掃除をした後は気持ちが良い。心身ともに爽快な気持ちになる。そしてスッキリと気分転換も出来るのである。これはどんな薬よりも体に良い。掃除なんて肉体労働の中でも最低ランクの職種だと、誰でもが思うし作業も好まない。しかしやり終えた後の爽快さは何事にも代えがたい喜びである。人類が誕生して以来、最初の仕事はこの清掃作業から始まったのではないか、この単純で原始的な労働こそが、人類が心身ともにバランスを保ち、健康を維持していく最も良い方法ではないかと思う。
デパート内各階の売り場風景
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